Designers File #01 08sircus
【後編】
-Kiminori Morishita-
注目のデザイナーをフィーチャーしてお届けする連載企画。初回は、08sircusの森下公則さんをお迎え。 2021年春夏コレクションから、クリエイションの背景を紐解く。
Q.オリジナルのテキスタイルが毎シーズン印象的ですが、今季イチ推しの柄は?
アルファベットをコラージュして作り上げた柄は、壁に貼ってあるようなヴィンテージのタイルがあって、そのテクスチャーを取り込んだものです。
もともとあったアルファベット柄をバラバラに解体し、再度組み合わせ、抽象的な模様へとアレンジしました。柄に入れているアルファベットは、「LOVE AND PEACE」のスペルで、
コロナ禍における僕なりのメッセージです。色もモノトーンのほか、ヴィンテージっぽいグレイッシュなカラーにしました。
Q.素材使いも多彩なコレクションの中で、特にこだわった素材は?
ネックや袖口に共紐をあしらったドレスは、ウール素材を使用しています。ウールは冬のイメージがありますが、本来動物の毛なので、暑いときには涼しく、寒いときには暖かく、環境に適応するものなんですね。
春夏の素材として使用するために細いウール糸を作り、薄く透けるような生地ができあがりました。清涼感や通気性があり、肌触りもいい。ウールがもつシワになりにくい復元性もあって、なかなかいい一枚になったと思っています。
Q.他のブランドにはない、「08sircus」の強みは何ですか?
自分ではわからないのだけれども、買ってくださったお客様からは、「吊るしてあるのを見ると普通だけれど、着ると全然違いますね」とよく言われます。一見目を惹くような派手さはないけれど、パターンやカッティングにはかなりこだわって作っているので、実際に袖を通しもらうと、着心地のよさやシルエットの美しさを実感してもらえるのではないでしょうか。
Q.「08sircus」をどのような方に着用してもらいたいですか?
気に入ってくださった方なら、どなたでも。ただ僕がおしゃれだなと思うのは、自分のスタイルを貫いている人。
そういう人はたとえ時代にそぐわない服を着ていても、人となりが外ににじみ出ていて、身だしなみにちょっと気を遣うだけで充分かっこいい。それがおしゃれの理想だなと思っていて。そういうと、「新しい服必要ないんじゃない?」となってしまうのだけれども(苦笑)、信念というか、芯のある人が着てくださり、サーカスのカラーを自分に取り込んでもらえたら嬉しいですね。
Q.最後に、「08sircus」の今後の展望についてお聞かせください。
2021年秋冬では、スカートなど女性が主に着る服は別として、ほとんどの服をユニセックス展開にしています。世の中的にも「ジェンダーレス」というキーワードが注目されている中で、女性が着る男性服、男性が着る女性服とは言わないですけれども、その交差する部分のアイテムや着こなしが自分の中でも気になっています。ジェンダーを超えた服をどういう形で表現するか、時代に合わせていくかという部分が今後のテーマであり、やってみたいなと思っているところです。
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08sircus
Manerd tropical gather dress55,000円(税込)
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08sircus
Cu/C alphabet tile print drape neck top33,000円(税込)
PROFILE
森下 公則(Kiminori Morishita)
アパレルメーカーにてチーフデザイナーとして数々のブランドを手掛け、2002年より社内ブランドとして「kiminori morishita」をスタート。パリでショーや展示会を行い、インターナショナルに活躍するデザイナーとして注目を集める。2009年に同社を退職後、新ブランド「08sircus」を立ち上げ、2010年春夏にファーストコレクションを発表。ハイセンスなデザインとクオリティーの高さに定評がある。 Instgram@08sircus
PHOTO/TATSUYA YAMANAKA
TEXT/AYAKO TAKAHASHI